上野雄次 | Yuji Ueno

花道家/アーティスト

上野雄次(うえの・ゆうじ)は、いけばなを即興的な行為芸術としてとらえ、命と死、生と空間の接点を探究する花道家・現代アーティストである。
 
1967年、京都府向日市生まれ。思春期を両親の故郷である鹿児島で過ごし、現在も自身の故郷は鹿児島であると考えている。
19歳のとき、勅使河原宏の竹のインスタレーション作品に強く衝撃を受け、いけばなの世界へと入る。
伝統的な技法と型を学びながらも、当初からその枠を越えた表現──特に現代美術の視点からの花のあり方──に深い関心を抱いていた。
以後、オブジェクト・インスタレーション・空間芸術の領域で「花を使った表現」を展開し、いけばなという言葉の限界と可能性を問い続けている。
 
1999年より、いけばなのインスタレーションにおいて、日本文化における「見立て」の概念が深く関与していることに着目。
コンセプトを「しつらい」と名づけ、工芸作家の個展会場やライブ空間などの構成を行う表現活動を開始。
多数のアーティストとのコラボレーションを通して、場・花・身体の関係性を構築してきた。
 
2003年からは、茅場町のギャラリーMAKIの坂巻氏の勧めを受け、空間・時間・素材・身体の交差によって生まれる即興による花いけパフォーマンスを本格的に開始。
舞踏、音楽、建築、現代詩など多分野との共演を通じて、形式化された技術ではなく、「花と生の本質に向き合う行為としてのいけばな」を身体的・感覚的に実践している。
 
2011年8月、東日本大震災後の混乱と再生の空気の中で、即興表現の根源的な力を社会と共有する方法として、対戦型ライブイベント《花いけバトル》を創案・主宰(〜2017年)。
その中で上野自身が展開したのが、《Back to Back》スタイルである。
この形式は、1人がいけた作品とその場の空気・動作・精神を、次の者がその場で受け取り、順番にいけていくという即興の構造を持つ。
同時性ではなく、応答性・対話性・時間差の緊張を重視するこの構造により、
“即興”という行為がもつ精神性、集中力、そして目に見えない影響のやりとりが舞台上に可視化される。
これは単なるライブ形式を超え、いけばなの本質を舞台化する実験的かつ詩的な実践として、現在も継続されている。
 
以後も、国内外の展覧会、パフォーマンス、舞台美術、ワークショップ、教育活動を通じて、いけばなを単なる伝統文化ではなく、精神と存在の問いとしての芸術として深化させてきた。
 
著書に『花いけの勘どころ』(誠文堂新光社)、英語版『Ikebana: The Zen Way of Flowers』(Tuttle Publishing)など。
NHK「あさイチ」「美の壺」などのメディア出演も多数。
近年は軽井沢を拠点に、自然と呼応する場所での創作と、自らのルーツに立ち返るような静かな探究を続けている。
 
主な活動領域
•即興花いけパフォーマンス(国内外)
•花材を用いたインスタレーション・現代美術作品
•展覧会・ギャラリー・舞台空間での創作
•花いけバトル創案(2011〜2017)
•《Back to Back》スタイルの実施・探究
•ワークショップ・教育活動・執筆・講演
 
Born in Kyoto, Japan, in 1967, UENO is a flower arranger and artist, who’s currently based in Tokyo. In 1986, He encountered Hiroshi Teshigawara’s avant-garde works of ikebana, the Japanese art of flower arrangement, and decided to pursue the world of floral art. Since he started teaching ikebana in 2004, he has dedicated himself to imparting the knowledge of “what makes beautiful flower arrangement, what makes good flower arrangement,” to his students, while continuing his own quest to explore further in the art of flower arrangement internationally. He has put together the live performances titled “hanaike” in 2005, and has also hosted the event “Flower Battles,” the competition, in which flower arrangers perform live in front of an audience. At KENPOKU ART 2016, he incorporated 3D printers, while still maintaining the essence of flower arrangement. His creative activities have extended to places such as Bali and Thailand, and to numerous collaborations with craftspeople and musicians.

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